塾長の考え(なつかしい感覚)

先日知り合いの教室に出向いた。

 

どうしても講師の都合ができず困っていた。

日曜日だったので助っ人になった。

 

そこで私は「代理としての講師」をした。

見知らぬ生徒たちを前にして自己紹介。

北斗塾の塾長であることも当然だが言った。

 

生徒たちは小学生と中学生だった。

その子たちのことを知るために質問をした。

どこの学校の生徒でどこに住んでいるのか。

 

相手のことを知らないと、

コミュニケーションはできないから。

 

どの生徒も、

勉強はきらいだと言った。

勉強はあまりしないと言った。

勉強は得意ではないと言った。

勉強は楽しくないと言った。

勉強はやりたくないと言った。

 

これには「なつかしい感じ」がした。

 

30年前に独立して学習塾をつくった。

私は塾長になった。

生徒は4人でスタートした。

実家の近所の子が2人、

チラシで来た生徒が2人。

チラシで来た生徒たちはその春の時期に、

よその地域から引っ越して来た生徒だった。

 

新しい土地で右も左もわからないから、

地元にある学習塾ではなくて、

自宅の近くに偶然できた新しい塾に、

「良い塾なのか悪い塾なのか」

それを確認できないがゆえに入ってきた。

 

実家の近所の子2人のうち、

1人は私が行く床屋の奥さんの紹介。

もう1人は親友の親が経営する酒屋の、

常連客のお子さんだった。

 

この4人はまずまずいい子たちだったが、

このあとに入塾してくる生徒たちは皆が、

「勉強はきらいです」

と口に出す子たちだった。

この子たちを丁寧に指導していきながら、

北斗塾はだんだんと成長していった。

 

このころに入ってきた子たちは、

その地区のいろんな塾に通っていた子たちで、

どこの塾でも成績が上がらずに、

そこの塾長や講師たちからバカにされていた。

 

学校で先生や友達からバカにされて、

塾でも再びバカにされる。

その子たちには「居場所」がなかったのだ。

だから北斗塾に来たのである。

そこの塾の友達たちからは、

「裏切者」と呼ばれながら…。

 

当時のこの子たちのことを突然思い出した。

あのときの子たちと雰囲気が似ていたから。

 

今の北斗塾に来ている子たちがみな、

「勉強が好きです」

などということは決してないのだが、

それでも前向きに取り組もうとしている生徒、

そういう生徒がほとんどである。

これは断言できる事実だ。

 

がんばればすぐに成績が上がる、

そんなことはない。

あったとしてもそれは、

範囲と問題が事前にわかっている、

そういったテストの成績に限る。

 

真の学力とは農作物といっしょで、

種をまいたらすぐに果実が回収できる、

そういうものでは絶対にない。

これと同じだ。

真実の結果ならば目に見えてくるまでに、

それ相当の時間がかかる。

 

その時間がかかっている内に、

ほとんどの生徒はギブアップする。

だから、

目に見える「よい成績」は得られない。

だから、

サポーターとしては塾、

プラス「時間」が必要。

 

 

(続く)