塾長の考え(自立型個別指導)26

「塾に入って最初のテストですよ!」

「成績が上がらないとおかしいですよね?」

「塾に入る前と入った後では違わないと」

 

私が塾長になったのは平成5年3月。

今は令和5年。

 

塾をつくったときからおよそ15年間は、

 

「すぐに成績が上がること!」

 

これに私自身が執着していた。

 

なぜならすぐに結果が出ないと、

生徒も親御さんも不満を持つのではと、

内心とても恐れていたからだ。

 

それに加えて、

だいたい3ヵ月もあれば1回くらいは、

学校の定期テストがある。

 

特に中学生。

 

この生徒たちやその親御さんにとって、

「成績」とはすなわち、

中間テストや期末テストの結果を指す。

 

これはハッキリ言って楽勝。

範囲が決まっているのだから、

そこばかりを生徒たちに勉強させればよい。

 

だから生徒には、

「範囲をとにかく何も考えずにやれ」

「3回やれ、とにかく!」

「3回やったか?」

 

親御さんたちには、

「3回やればだれでもできますよ」

「簡単なことです」

「3回やるの実は難しいですけどね」

 

などとよく話していた、自信満々に。

今思い出すと顔から火が出るほどはずかしい。

 

そんな単純なやり方は、

指導相手が中学生であり、

目標が県立高校受験の場合のみ通用する。

それも「普通科」受験のときのみ。

 

だから、

県立高校合格者が何人中何人なのか。

合格率はどうなのか。

D判定からでも合格できる。

 

宮崎西高校普通科〇〇名合格!

 

こんなことにとても神経を使っていた。

 

当然だが県立高校の合格率は高かった。

 

だが、

このやり方は大学受験には通用しない。

 

戦略的指導でも何でもなく、

単なる「根性論的指導」だからだ。

 

「3回範囲をやったか!?」

 

と激を飛ばすやり方では、

難易度の高い大学入試にはまず通用しない。

 

それにそもそも、

高度な思考力を養成するのには、

それ相応の「やり方」というものがある。

 

学習回数や学習時間の問題というよりも、

別のところに解決方法はある。

 

農業で言うところの「収穫の法則」は、

自然のシステムだが「真の学力」養成にも、

当然ながら通用する。

 

それでもふつうの親御さんたちならば、

塾に対して迅速な「結果」を期待しがちである。

 

仮に、先月種をまいたのに、

翌月には芽が出て花が咲き果実が手に入る。

 

そんなことはない。

 

収穫できるのは自分が蒔いた種の分だけ。

立派な果実になるまでには、

過酷な自然環境や突発的な台風など、

いろいろな試練を乗り越えたときだ。

 

それに本当に収穫できるのは、

だいぶんと時間がたってからである。

 

高い効率性と生産性を望むなら、

高い士気につながるような講師と生徒との、

緊密な関係も欠かせない。

 

時には他の何よりも、

親近感の醸成が必要となる場合もある。

 

信頼関係がなければ本物の指導はできない。

 

生徒本人の努力と塾の講師の熱意が合わさり、

そこに親御さんの真剣な想いも必要。

 

本物はインスタントでできるはずはない。

 

 

(続く)